慢性腎臓病(CKD)と診断されたら ― 最初に大切なこと、続けて大切なこと
今回は、「慢性腎臓病(CKD)と診断されたとき、どのような対応が必要か」について、当院でよくお話ししている内容をご紹介します。
◆ まず最初に行うべきこと
慢性腎臓病とは、腎臓の働きが徐々に低下していく状態です。
診断された際には、まず「なぜ腎臓の働きが悪くなったのか」という原因の特定が大切になります。
<原因を調べる理由>
腎機能の低下には治療可能な原因があることがあり、早期に対応することで進行を抑えられる可能性があります。
そのため、過去の検査データがあれば確認し、
- いつから腎機能が低下していたか
- 尿に異常が出ていたか
- 進行のスピードはどうか
といった経過の把握が重要です。
<原因として多いもの>
- 糖尿病
- 高血圧
- 慢性糸球体腎炎(IgA腎症など)
一方で、明確な原因がわからないケースも少なくありません。先天的な要因や小児期の病気が関係している場合もあります。
大切なのは、特殊な治療が必要な病気を見逃さないこと。そのうえで、腎臓を「守る治療」へと進んでいきます。
◆ 腎臓の働きが落ちているときの治療
残念ながら、慢性的にゆっくり腎機能が低下する場合、現代の医学では元に戻す治療はありません。
しかし、「進行をゆるやかにする治療」は可能です。
<腎臓を守るポイントは「血管を守ること」>
腎臓は「血管のかたまり」といわれる臓器。血圧や血糖、脂質などを整えることが腎臓の保護につながります。
- 血圧管理(最重要!)
- 糖尿病・脂質異常症の治療
- 禁煙・適正体重の維持
- 高尿酸血症・高トリグリセリド血症の管理
とくに血圧は、腎臓が悪くなると「より厳密なコントロール」が必要です。
◆ 食事療法の基本 ― 塩分と蛋白のコントロール
腎臓病の食事療法では、「塩分制限」と「蛋白制限」が大きな柱となります。
<食塩の制限(食事療法その1)>
目標は1日6g未満。
日本人の平均摂取量は約11gであり、かなりの意識改革が必要です。
とはいえ、「できる範囲で減らすだけでも」腎臓と血圧には良い影響があります。
<蛋白制限(食事療法その2)>
蛋白制限は「やせて体を弱らせてしまう」リスクもあるため、
- 高齢の方
- やせ型の方
には推奨しないこともあります。専門の栄養士による指導が不可欠です。
◆ 腎機能が30~50%以下になると起きること
腎臓の働きがある程度低下すると、
- 貧血
- カリウム・カルシウムなどの異常
- 体の酸・アルカリのバランスの乱れ
などが起こりやすくなります。これらに対症療法で適切に対応することが、腎機能の維持に役立ちます。
◆ お薬とのつきあい方
腎機能が落ちていると、薬の体内での動きも変わります。
<注意が必要な薬>
- 減量が必要:抗菌薬、H2ブロッカー(胃薬)、抗ウイルス薬など
- 腎機能が悪いと使えない:造影剤、免疫抑制剤の一部
- なるべく避けたい:ロキソニンなどのNSAIDsなど
<状況に応じて使用する薬>
- ACE阻害薬やARB(血圧と腎保護の両面あり)
- ビタミンD製剤(骨粗鬆症の薬)
薬は腎臓にとって両刃の剣です。腎臓内科の視点で、バランスを見ながら調整していきます。できればサプリメントなどのご自身の判断で使用されている薬剤も中止が望ましいです。腎臓専門医にご相談ください。
◆ 水分補給と脱水の注意
脱水は腎臓の敵です。水分摂取の目安は1日1L以上(心臓などに問題がなければ)。
カフェインやアルコールは利尿作用があるため、水分補給には適しません。
◆ 腎臓と心臓は支え合う関係
腎臓と心臓は「血液と水分のコントロール」で強くつながっています。どちらかが弱ると、もう一方にも負担がかかるため、両方を意識した治療が大切です。
◆ 最後に:バランスと前向きさを大切に
腎機能低下を指摘されたら、まずは内科、可能なら腎臓内科を受診してください。
<大切なポイント>
- 原因の見極め
- 生活習慣の見直し
- 薬の調整と脱水予防
- 継続すること、前向きでいること
腎臓は、少しの積み重ねで大きく未来が変わる臓器です。
一緒に、できることから始めていきましょう。
ご相談やご不安があれば、いつでも当院までお気軽にご相談ください。
あなたの腎臓の健康を、私たちが一緒に守ります。