【腎臓の危機】気温が1℃上がると、腎障害リスクも上がる?
~最新研究が明かす「暑さ」と「急性腎障害(AKI)」の深い関係~
こんにちは。
毎年のように「記録的猛暑」がニュースになりますが、皆さん体調は大丈夫ですか?
熱中症には注意しているという方は多いですが、実は“腎臓”も暑さに非常に弱い臓器です。今回は、2024年に発表された国際研究の結果をもとに、高温と「急性腎障害(AKI)」の関係について解説します。
■「気温が1℃上がるごとに、AKIのリスクも上がる」
この研究では、アメリカ・イギリス・中国・ブラジルなど、4か国・2100万人以上の入院データを用いて、気温とAKI(急性腎障害)の関係を解析しました。
結果として明らかになったのは、
🌡 気温が1℃上昇するごとに、AKIのリスクが約0.9~1.5%増加する
さらに、「連続した3日間の平均気温」が高いほどリスクは顕著で、
特に35℃を超える日が数日続くと、リスクは10%以上上昇するという報告もあります。
■AKIとは?そして、なぜ暑さで起こるのか?
AKI(急性腎障害)とは、急激に腎機能が低下し、体の老廃物を処理できなくなる状態です。重症になると透析が必要になるケースもある、非常に危険な疾患です。
暑さによるAKIの主な原因は以下の3つ
- 脱水症状による血流低下
→ 腎臓に流れる血液が減ってダメージ - 熱中症の進行による全身障害
- 筋肉の破壊(横紋筋融解症)による腎毒性
→ 特に屋外作業やスポーツ時に要注意!
■どんな人がリスクが高い?
この研究では、以下の人たちにおいて、AKI発症リスクが高くなる傾向が見られました。
- 65歳以上の高齢者
- 糖尿病、高血圧、心疾患を持つ方
- 慢性腎臓病(CKD)の既往がある方
- 貧困地域や医療アクセスの悪い地域に住む方
特にCKD患者では、たった数日の猛暑で腎機能がさらに悪化し、入院や死亡のリスクが跳ね上がるという結果が報告されています。
■私たちができる対策は?
暑さによる腎障害を防ぐために、今日からできること:
✅ 水分補給を意識して、のどが渇く前に飲む
✅ 日中の外出はできるだけ避ける/日陰・冷房のある場所で過ごす
✅ 利尿薬や降圧薬を服用している方は、主治医と相談を
✅ 高齢者や持病のある方は、体調の小さな変化にも注意を
また、高温の日が続く時期には、腎機能(血液検査でのクレアチニンやeGFRなど)の定期チェックも非常に重要です。
■まとめ:腎臓も「暑さに弱い」臓器です
今回紹介した研究は、「地球温暖化と健康被害」がすでに現実の問題となっていることを示しています。腎臓は自覚症状が出にくい臓器ですが、一度ダメージを受けると回復が難しいケースもあります。
当院では、慢性腎臓病の早期発見や、暑さ対策の生活指導、必要に応じた検査や処方の見直しも行っております。
「最近、暑さで体調が優れない」
「薬の影響で脱水しやすいかも?」
そんな時は、お気軽にご相談ください。
参考文献 Lancet Planet Health 2024; 8: e156-62.