【透析患者さんへ】ドライウェイトってなに? 〜適切な体重管理が健康を守ります〜
透析を受けている患者さんにとって、「ドライウェイト」の管理はとても大切です。これは単なる「体重」ではなく、心臓や肺への負担を減らし、命を守るための基準なのです。
◆ ドライウェイトとは?
透析後に体の余分な水分が取り除かれた「理想的な体重」のことをドライウェイトといいます。
以下のような状態が整っていると、ドライウェイトが適切だと判断されます。
- 透析中に血圧が大きく下がらない
- むくみや息苦しさがない
- 日常生活を快適に過ごせる
「最低体重」や「適正体重」と表現されることもあります。
◆ なぜ水分の調整が必要なの?
腎臓の働きが悪くなると、体に余分な水分や老廃物がたまりやすくなります。
放っておくと、むくみ、呼吸困難、高血圧、心不全などのリスクが高まります。
透析では、この余分な水分を人工的に取り除いて、ドライウェイトまで戻すことが重要になります。
◆ ドライウェイトと「痩せた」の違い
透析中の方が「体重が減ってきた」と感じたとき、それは脂肪や筋肉が落ちてしまった=体が痩せたということです。
腎臓が正常な方なら、水分バランスは体が自動で調整しますが、透析中はドライウェイトという基準に合わせて人工的に除水を行っているため、痩せたことに応じてドライウェイトを下げる必要があるのです。
「また透析で体重を下げられた…」と思われるかもしれませんが、
実は “痩せたから体重を下げている” のです。
すでに痩せてしまった体に、以前のドライウェイトを当てはめていては、水分が過剰に残り、心臓や肺に負担がかかってしまいます。
◆ ドライウェイトの見直しサインとは?
ドライウェイトは一度決めたら終わりではありません。体調や季節、栄養状態によって見直しが必要です。
- 胸部レントゲン(心胸比:CTR)
→ 心臓の大きさから体の水分量を推測します - 心エコー(IVC径)
→ 下大静脈の太さから心臓への水分負担を評価します - 血液検査(BNPなど)
→ 水分過多に反応して分泌されるホルモンをチェック
また、透析後に立ちくらみやこむら返りがある、疲れが取れないといった場合も、ドライウェイトの見直しが必要なサインです。
◆ 透析間の体重増加の目安
透析と透析の間にどれだけ水分が体に溜まってしまったかは、体重増加量でチェックできます。
- 中1日空き(例:月→水)→ ドライウェイトの3%以内
- 中2日空き(例:金→月)→ ドライウェイトの5%以内
例)ドライウェイト70kgの場合
・中1日:72.1kg(+2.1kg以内)
・中2日:73.5kg(+3.5kg以内)
毎日の朝晩の体重測定がとても大切です。
◆ 「ドライウェイトを下げる」の本当の意味
最後にもう一度お伝えしたいのは、ドライウェイトを下げることが目的ではないということ。
体が痩せてしまったときに、余分な水分を正しく除去するためにドライウェイトを再設定しているのです。
つまり、痩せないこと、筋肉や栄養状態を保つことがもっとも大事なのです。
◆ ドライウェイトは“着陸地点”
飛行機が安全に着陸するには、正確な着陸地点が必要です。
透析でも、体に無理のない「着地点=ドライウェイト」を目指して、安心・安全な除水が行えるよう、チームで支えていきます。
◆ おわりに
ドライウェイトは、透析患者さんの命と健康を守る基準です。
体調や栄養状態に合わせて調整を続けることで、より快適に透析治療を受けていただけます。
分からないこと、不安なことがあれば、いつでもスタッフにご相談くださいね。
一緒に、健康で安心できる毎日を目指しましょう!