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【透析患者さんのかゆみ】それ、我慢しないでください ~かゆみの原因と対策を丁寧に解説します~

こんにちは。
今回は、透析患者さんにとって非常につらい皮膚のかゆみ(皮膚そう痒症)について、原因から対策、新しいお薬まで詳しくご紹介します。

「かゆいだけだから…」「相談するのも大げさかな…」
そんなふうに感じて、かゆみを我慢していませんか?

 

実は、日本の透析患者さんの60〜80%が皮膚のかゆみを経験しており、その約4割が中等度以上のつらい症状を訴えています。かゆみが原因で眠れなかったり、集中できなかったりする方も多く、生活の質(QOL)を大きく損なう症状として近年注目されています。

 

◆ 透析患者さんに多い「かゆみ」その原因は?

透析患者さんのかゆみ(透析そう痒症)は、単なる「乾燥」だけでなく、複数の要因が重なって起こると考えられています。

主な原因

部位 原因 主な対策
皮膚 ① 乾燥による神経過敏化
② 尿毒素やミネラルの蓄積
③ 痒み物質(ヒスタミン・サイトカインなど)の過剰産生
保湿スキンケア、透析条件調整、薬物治療など
中枢神経 ④ 痒み制御の乱れ(オピオイド受容体の異常) 内服薬(ナルフラフィンなど)

 

◆ ① 皮膚の乾燥と神経の過敏化

透析により皮膚の水分や皮脂が減り、さらに加齢による皮膚機能の低下も重なることで、皮膚が極度に乾燥します。
すると、痒みを感じる神経(C線維)が皮膚の表面近くまで伸びてきて、衣類の摩擦やちょっとした刺激にも敏感に反応し、「かゆい」と感じやすくなってしまうのです。

◆ ② 体内にたまる“痒みのもと”

透析では取りきれない中〜大分子の尿毒症物質や、血中カルシウム・リン・副甲状腺ホルモンの増加なども、かゆみの原因になります。
これらの物質が皮膚や血管・関節に沈着すると、炎症や刺激を引き起こし、強いかゆみを感じるようになります。

◆ ③ 痒み物質の過剰

ヒスタミンやサイトカイン、サブスタンスPなどの「痒みメディエーター」が過剰に作られることで、神経が刺激されかゆみが生じます。
透析患者さんの場合、抗ヒスタミン薬が効きにくい難治性のかゆみを伴うことも多いのが特徴です。

◆ ④ 脳内の痒み制御バランスの崩れ

痒みを感じる・抑えるバランスを保っている神経内の「オピオイド受容体」の働きが乱れることでも、かゆみが悪化します。
この機序に着目して開発されたのが、「ナルフラフィン(レミッチ®)」という内服薬で、透析患者さんのかゆみに保険適応があります。

 

◆ 治療の基本は「スキンケア」から!

かゆみ対策の第一歩は、なんといっても保湿ケアです。
保湿剤を使うことで、皮膚のバリア機能を高め、かゆみを引き起こす神経の過敏化を抑えることができます。

  • 正しい塗り薬の使い方
保湿剤 痒み止め(抗ヒスタミン薬・ステロイドなど)
乾燥している部位全体に 赤み・かゆみのある部分だけにピンポイントで
  • 順番は、保湿剤 → 痒み止めの順で
  • 量は「ティッシュが貼りつくくらい」が目安
  • 擦りこまず、やさしく手のひらで伸ばしましょう

 

◆ 日常生活のちょっとした工夫も効果的!

  • 入浴: 熱すぎるお湯(40℃以上)や長風呂はNG
  • 衣類: 肌に直接触れるものは綿・絹素材を
  • 食事: アルコールや香辛料は控えめに
  • 掻かない: 爪は短く、冷やして対応を!

「かゆいから掻いてスッキリ」…は逆効果!
掻くことでさらに神経が刺激され、かゆみが悪化してしまいます。

 

◆ 新しい治療薬「ジフェリケファリン」にも注目!

2024年に日本でも承認されたばかりのジフェリケファリン(difelikefalin)」という注射薬は、週3回の透析終了時に透析回路から注入され、中枢神経に働きかけてかゆみを和らげる新しい薬です。
すぐに効くタイプではなく、1か月〜数か月の継続で効果が現れるとされています。

副作用も比較的少なく、今後の「難治性のかゆみ治療」の選択肢として期待されています。

 

◆ 最後に:かゆみは「治療すべき症状」です!

「かゆいだけ」と思っていたその症状、実は体の中からのサインかもしれません。
かゆみが続くことで睡眠が妨げられたり、精神的に追い詰められたりする方もいます。放っておかずに、ぜひ一度ご相談ください。

塗り薬の使い方がわからない、生活の工夫が知りたい、新しい治療を試してみたい……どんなことでもお気軽にご相談ください。
私たち医療スタッフが、皆さまの“かゆみ”に寄り添い、一緒に快適な生活を目指します。

 

那珂川市、福岡市南区、春日市、大野城市の方は近隣ですので、気になる方は092-555-6886までお気軽にご相談ください。

たかえ内科クリニック

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